第58章 ※十四松とのんびりしたい時に読む話
二人であったまった後、支度を終え家を出た。
まだ誰の足跡もついていない雪の上を、二人でキュッキュッと音を立てて踏みしめる。
小学生の時、笠地蔵の演劇で片栗粉をビニール袋に入れて雪を踏む再現なんてしたっけ。
今思うと、小学生の発想ってすごい。
積雪は大体15〜20センチくらい。
東京にしては随分降ったほうだ。
「あっははー!スノーパーラダーーイスッ!!」
十四松くんはブルドーザーのようにゴリゴリ雪道を突き進む。
「待って十四松くん!」
ムートンブーツで、雪を上から踏むようにノロノロと歩くわたし。
口を三日月型に開きながら、笑顔で振り向く十四松くん。
寒さでほっぺたがまっかっかだ。
というか、雪が降ったのにだぼだぼなパーカーと短パンではしゃぎ回っている。
ものすごく薄着だけど寒くないのだろうか?
「手ーつなぐー?」
「つ、繋ぐ繋ぐ!」
十四松くんの萌え袖と、ファーが付いたわたしの手袋が硬く結ばれた。
「ねぇ、どこに向かってるの?」
「広くて足跡がないとこーー!!」
「わかった!」
具体的な返答では無かったけれど、ふわふわな雪で遊びたいという強い意思は伝わった。
ジャリジャリと車のチェーンが鳴り響く街を、二つの足跡がさまよい歩く。