第56章 お前がいないとだめなんだ カラ松
片方の胸を掌で包み、ゆっくりと円を描くように揉み込んだ。
柔らかいのに張りがあり、男を虜にする白い肌。
愛らしい胸の先端は、触って欲しいと自己主張を始める。
応えるように指で弾いてやると、それだけで主は身体を震わせた。
唇を耳の裏、首筋そして鎖骨へと滑らせる。
何度も肌を重ねる事により、全身が敏感になっていた主は、それだけで肌を粟立たせた。
部屋着を脱がせ、左胸の上で唇の動きを止める。
「んぅ…っ」
微かな痛みに耐える主。
オレの独占欲の証は止まらない。
いくつも胸元に残していゆく。
この間はあまりにもあちこちに付けたので、着る服が無くなると怒られたな。
けれど今は、全てを許してくれている。
優しいお前は、オレの全てを受け止めてくれる。
無様なオレも、ワガママなオレも…。
ありのままのオレを。
(——なぁ、たまには甘えてもいいだろ?)
お前の温もりに包まれたい。
「主…」
愛撫の最中、そのまま胸に顔をうずめた。
「どうしたの?珍しいね」
「なんだろうな…ホッとする」
「ふふっ」
主が髪に触れてくる。心地よくて瞳を閉じる。
オレは六人兄弟の次男。
長男のおそ松は、ここぞという時は頼りになるが、普段は精神がまるで子供だ。
享楽主義、これでいいのだの精神で、クズの道を突き進むトップクズニスト。
そんなあいつを支えながら、四人の個性豊かな可愛い弟達の面倒を見るのが、松野家の参謀的存在である次男カラ松の役目。
そう思い過ごしてきたが、時々自分の存在意義が分からなくなるんだ。
親切にしても報われない。優しくしても感謝すらされない。
本来優しさとは無償の愛のはずなのに、認められたいという欲求に駆られ、苛立ちを覚え、行き場のない気持ちに悶々とする日々。
果たしてオレは、ブラザー達に必要な存在なのだろうか?
オレはブラザー達にとって、ちゃんと兄であり弟として認められているのだろうか——と。
己のアイデンティティに疑問符が浮かんだ時、
主の真っ直ぐな愛と笑顔にいつも救われていた。
オレはオレであり、カラ松はこの世界にオンリーワン。
お前が愛してくれたから、このままでいいんだと思えたんだ。