第56章 お前がいないとだめなんだ カラ松
カラ松くんは、伏し目がちになったかと思うと、
「恥ずかしいが、聞いてくれ…」
躊躇いながらも言葉を紡いだ。
「実は…ここ数日、毎日仕事を探していた。結果は——オレの様子で察して欲しい」
「カラ松くん…」
「変わりたかったんだ。お前を支えられる男になって、迎えに来ようって思ってた」
目を逸らし、悔しそうに下唇を噛んでいる。
「——無様な今のオレを見られたくなくて、距離を置きたいと言ってしまったんだ」
そう言うと、自嘲するように力なく笑った。
わたしは、何もわかってなかった。
自分の事しか見えていなかった。
自分が嫌われたのかとか、自分に魅力が無いから飽きられたんだとか…。
カラ松くんが仕事に対してそんなに思い詰めていたなんて…。
そして、言わせてしまった事に深く後悔をした。
どうして、気づいてあげられなかったんだろう。
「カラ松くん…ごめんなさい。わたし…」
「謝るな!変にカッコつけようとして何も言わなかったオレが悪いんだ」
優しいキスが、泣き腫らした瞼に落とされる。
「わたしを嫌いになって、離れちゃったのかと思ってた」
「嫌い?一体何を言っている?お前ほどいい女はいないって会う度に言っているだろ?」
「会う度にそんなすごい事言われてたっけ?」
「目が合う度の方がいいか?」
「いや、いいです」
目が合う度にそんな事言われたら、胸焼けを起こしたのち胃に穴が空いてしまう。