第56章 お前がいないとだめなんだ カラ松
「どうしたのその格好!?なんでそんな傷だらけなの!?」
「転んだ」
カラ松くんは、壁に手をつきヨロヨロと立ち上がる。
「ばっ、馬鹿じゃないの!?転んだだけで、そんな全身傷だらけになる訳ないでしょ!!」
もう会えないと思っていた。
ひどい言葉を沢山浴びせたのに。
どうして…。
涙が勝手に溢れては頬を伝う。
「泣くな」
傷だらけの身体がわたしを抱きしめる。
「…お酒臭い。もしかして酔っ払って転んだの!?」
「そうだ。盛大に空を飛ぶ勢いで転んだ」
「意味わかんないっ、ホント呆れたっ!ちょっ、もう離して!!」
「離さない!!」
傷だらけなくせに、わたしを抱き上げるとそのまま家に入り、強引にベッドに押し倒した。
スプリングが軋むと、驚いたミウがベッドから飛び出し、リビングへとかけていった。
抵抗を続けるわたしを深い口づけが襲う。
鉄の味がする、優しくも激しいキス。
背中を叩いて暴れても、わたしの口内でカラ松くんの舌がわたしの舌を吸い絡め、気持ちよさに理性も吸い取られていく。
舌で送り込んできた唾液を飲んだ拍子に咳き込むと、ようやく唇が離された。
「ケホッ、ケホッ…な、なんなの!性懲りもなくまた来て!」
「理由も話さず、一方的にひどい事を言ってしまい悪かった…!」
「もういいよ!聞き飽きた」
そう言いながらも、馬鹿正直に涙を流すわたし。
そんなわたしを見透かしたように、カラ松くんは指で優しく涙を拭う。
「距離を置きたいと言ったのは、決して会いたくなかったからじゃない。自分の身勝手なプライドのために離れていたかった。それだけだ」
「……どういう事?」
わたしといるのが嫌になったからじゃなかったの?