第56章 お前がいないとだめなんだ カラ松
カラ松兄さんが立ち上がると、トド松が暖簾から顔を出す。
「もしかして、今から主ちゃんに会いに行くの?」
「ああ。一松の一言で目が覚めた。今度こそちゃんと話してくる。正直にな」
「イタイ事言っちゃダメだからね!主ちゃんにひどい事言ったら…ボクの彼女にしちゃうからっ!」
そう言ったトド松に、口角を上げながら親指を立てている。そのささいなアクションすらイタイのを気づいていない。
まぁ元気になったからいいか。
それに、
(あんな言い方してるけど、なんだかんだカラ松の事応援してるんだな)
トド松の意外な一面を見た気がする。
って、なんか気持ち悪いな。
僕たち兄弟はこんな美談似合わない。
「ブラザー!チビ太!行ってくる!!」
「ようやく元気になったかコンチキショー!!男ならドーンとぶつかってきやがれ!!」
チビ太がカラ松兄さんの背中を、バシンと叩いて叱咤激励している。
「ギャハハハ!次俺のばんー!死んでこいやーーっ!!」
「グフッ!!センキューおそ松…っ!!」
いや、おそ松兄さんの肩パンは叱咤激励じゃなくただの暴力だから。
「じゃあね、主ちゃんによろしく!」
「チョロ松っ!愛してるぜ!!」
あー失敗した。
僕も殴ればよかった。
「カラ松にーさーーん?」
「なんだ?じゅうしまーつ?」
「早く主ちゃんのトコ行きたいよねー?」
「ああっ!きっと寂しくて震えているに違いない!!っておい?何してる?何故オレの身体をえっ?えぇぇぇえーーーー!!??」
十四松が、カラ松兄さんを両手で抱え、空に向かってぶん投げた。
あっという間に、闇夜の彼方に消えていく次男に向かい手を振る五男。
「いってらっしゃーーーい!!」
僕は、言っちゃダメだとは思ったけど…
「十四松、主ちゃんのアパート反対側」
「ボゥエッ!!??」
ツッコまずにはいられなかった。
そして、今夜のツケは励まし料として、全額カラ松のツケになったのだった。
・・・