第56章 お前がいないとだめなんだ カラ松
…開いた、けど。
尋常じゃない雰囲気に、思わずおそ松兄さんに話しかけた。
「ねぇ、なんかもめてない?」
「俺も揉みたーい」
このバカはまたそうやって茶化す。
「お前はいいかげんすぐ下ネタに持っていく癖をどうにかしろ」
「……クソ松、そのまま滅びろ…アッハァ!」
五分くらい経っても、玄関の前で話し合っている。
そして、とうとうドアが閉められた。
ドアの前、立ち尽くすカラ松兄さん。
「あっちゃー…」
さすがのバカも空気を読んだのか、トド松と抱き合う腕を離し頭を抱えている。
一松もニヤニヤが止まり、ジーッと哀れな次男を見つめながら、
「………これが、ニートの末路」
悲しい台詞を吐いた。
涙出るからやめてほしい。
「……ワンランク上を目指した結果、現実を突きつけられ…夢も希望も失うカラ松兄さん…」
案の定泣き始めるトド松。
泣きながら一松より相当ひどい台詞を放っている。
「世知辛いぜっ!!」
ホント、十四松の言う通り世知辛いよ…。
「…がんばってハロワ行ってたのに」
ポツリと本音を漏らしてしまった。
すると、
「ぃよしっ、今日みんなでチビ太のとこにでも行って、あいつの話聞いてやるかぁ」
おそ松兄さんは立ち上がり、膝の汚れをパンパンはたきながらそう言った。
普段バカなくせに、こういう時、変に空気を読んで頼りになるのがおそ松兄さんだ。
(こんなんでも、長男なんだな…)
「……一旦帰ろう」
一松の一言に僕らは頷くと、カラ松兄さんに気づかれぬようその場を後にし、パチンコに寄って帰ったのだった。
そして、バカ松が所持金百円しかないのを忘れていた僕達が、どうなったかは言うまでもない…。
・・・