第56章 お前がいないとだめなんだ カラ松
こんなにみんなに集中砲火を浴びせられ、涙目になってるかと思いきや…
「みんなの言っている事がよく分からない。それに、『痛い』というのがいまだに理解出来ないしな」
低めの落ち着いた声でそう言って立ち上がった。
「あれ、カラ松ぅ〜話途中なんだけど」
「出かけてくる」
「俺の釣り断っといてどこ行くんだよ!?」
「…ハロワだ」
『なっ!!??』
五人に衝撃が走る。
たまらず僕は確認した。
「ホントに行くの?いきなりどうしたんだよ?」
「いきなり?無職がハロワに行ってはいけないのか?」
「いやむしろ行くべきだけど…」
「…じゃあな」
カラ松兄さんは襖を開け、一度だけ振り向くと、
「ついて来るんじゃないぞ!」
念を押して出かけて行った。
・・・
「なにあいつ〜、不機嫌でイタくなくて誰松だよ!」
「もー、おそ松兄さんがストレートに聞くからでしょっ!」
「じゃあトド松ならなんて聞くんだよ?」
「ボクだったら主ちゃんに、『カラ松兄さんが心配だから相談のって?』ってお茶誘って探る」
「うわー、あざとーい」
おそ松兄さんの言う通り、相変わらず我が家の末弟はあざと腹黒ドライモンスターである。
心配するふりしてちゃっかり女子とお近づきになるとか、真面目な僕では到底思いつかない。