第55章 ぼくだって甘えたい… 一松
途中眠ってしまった一松くんを連れて、ようやく家に帰ってきた。
というか、カラ松くんが追いかけてきて一松くんをここまで運んでくれたのだ。
蹴られた脇腹は擦り傷になっていたので、消毒をしてあげた。
一松くんはというと、ソファーで呻きながら眠っている。
「すまないな…手当てなんて必要ないのに」
「こっちこそいつもゴメンね。運んでくれてありがとう」
「可愛いブラザーとその彼女のためなら当然だ」
不可思議な発言以外は、優しくて本当にいいお兄ちゃんだ。
「一松くんって、きっとカラ松くんが大好きなんだろうね」
「そうか?本当にそう思うか!?」
わたしの発言にカラ松くんは目を見開いた。
「うん。何をしても嫌われない、受け止めてくれるって思っているから、あんな風にキツく当たるんじゃないかなぁ?」
「フッ、困ったブラザーだ。オレにだけなら構わないが、それを主にもやってないか心配だ」
「うーん…わたしはまだ、そこまで信頼されてないかも」
「だが…」
カラ松くんは、一松くんが眠っているのをチラリと確認し、
「さっきオレが言ったことは本当だ。あいつは、オレ達兄弟には見せず、キミだけに見せる一面がある。そしてそれに随分救われている…。主のおかげで、あいつが抱えた闇…心の傷が癒えている気がするんだ。兄として、感謝する!!」
そう言うと、わたしに向かって土下座を始めた。
「あ、あのっ、そんなのやめてくださいっ!!」
「あいたーーっ!!」
「……」
…土下座の体勢が脇腹にきたらしく、すぐあぐらに戻った。
「…大丈夫?あの、本当に無理しないでください」
「いつつ…では主、心の中でキミに永遠の土下座を誓おう」
「ありがとうございます…」
その後、二人でしばらく話し込んだ後、
「じゃあ、気をつけて帰ってね。おやすみなさい」
「センキューそしてグッバイ一松ガール!あいつをよろしく頼んだぜ」
そう言い残し帰って行った。