第55章 ぼくだって甘えたい… 一松
ムッとした矛先はカラ松くんではなくわたしだった。
「…いいの?主は」
「いいって何が?」
「ぼくがこのまま、カラ松兄さんと帰っちゃっても…」
「そ、それは…その…」
一緒にいたいけど…というか、カラ松くんの前でそれを言わせる気なのだろうか…。
一松くんが、ジットリとした目つきでわたしを見ている。
「へーぇ、いいんだ?ヤらないで帰っても…」
「えっと…わたしは…い…いちま」
「ストップ・ザ・ラァァアブ!!」
「なっ!?」
言いかけた所でカラ松くんが遮った。
片手で目を隠し、もう片方の手をこちらに向け伸ばしている。
「イチャつくのを止めるんだッ!!でなければ、オレが壊れるッ!!」
「い、今イチャついてました!?」
「身体を寄せ合い至近距離で愛を囁き合う二人。そして…それを見せつけられるオレ!!まさに『きまぐれカラ松☆ロード』じゃないかっ!!」
よく分からないけれど、離れないとカラ松くんがまた変な事を言い出しそうだ。
無理やり一松くんホールドを引き剥がす。
「一松くんっ、今夜は帰って欲しくないからとりあえず離れてっ!」
「ぐあぁぁあーーっ!!オンザベーーッドッ!!」
「離れたのに今度は何ですか!?」
カラ松くんは胸を押さえながらうずくまる。
「…主、シカトして行こう」
「でも、倒れてるけど大丈夫なの?」
「…あぁ」
「ま、待て…オレの屍を越える前に一言だけ…!」
カラ松くんはヨロヨロと起き上がり、両手でわたしの手を握りしめた。
「主…キミのおかげで一松は随分と変わった。ありがとう!」
「カラ松くん…」
「あの内気だった一松が、愛を知り生き生きとしているのを見るだけでオレはうれしいだあぁぁぁあーーいっ!!??」
「調子に乗ってんじゃねぇぇえ!!消えろボケェッ!!」
足蹴をもろにくらいうずくまるカラ松くんを踏んづけて、一松くんは歩き出す。
(カラ松くん…いつも本当にごめんね…)
一松くんにバレないよう、カラ松くんの傷口にハンカチを当ててから後ろをついて行った。
・・・