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おそ松さん〜ニート達の裏模様〜

第55章 ぼくだって甘えたい… 一松


外に出ると、冷たく澄んだ夜空に月明かりがボウッと白い光を放っていた。

吐く息の白さに冬の訪れを感じる。

付き合い始めたのは、今年の6月くらい。

なぜ「くらい」なのかと言うと、正式な告白をお互いうやむやにしたまま交際を始めたからだ。

不器用で人付き合いの苦手な一松くん。

そんな彼が、自らわたしと過ごす時間を作ってくれるという事は…そういう事なのだろう。

そして月日は流れ、二人にとって初めての冬を迎えようとしている。

春夏秋冬…一松くんは、ずっと隣にいてくれるかな?

これからも…何年も何十年も…。


「ねぇ」

「なぁに?」

「…ぼくといるのに、何で黙ってんの?」

「ご、ごめんっ、寒いなぁーって思って」


ん?「ぼく」…?

いつもは一人称「おれ」だったような…。

一松くんの変化に少なからず驚いていると、いつもポケットに手を入れている彼なのに…。


「……手」

「あ…」


一松くんから手を繋いできた。

あったかくて大きな左手に、わたしの冷えた右手が包まれる。


(自分からスキンシップを求めてくる事なんて、滅多に無いのに…)


バクバクと心臓が音を立て始めた。


「…これだとまだ寒い」

「そう?わたしはあったかいよ?」

「いや、これが一番あったかい」


そう言うと、繋いだ手をポケットに入れてくれた。


「……ね?」

「…ありがとう」


一松くんは微かに微笑んでから前を向いた。

フラつきながらも、手を結び夜道を歩く。

どうしよう…。

妙に積極的でこっちが照れてきた。



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