第53章 番外編 秘密の放課後 F6一松
空き教室は倉庫のように扱われていた。
机やイス、パソコンが雑多に置かれている。
ホコリっぽいねと独り言のようにつぶやいたお前を、おれは待ちきれず抱きしめた。
お前は少し驚いていたけれど、すぐにおれの胸に顔をうずめ黙り込む。
一週間ぶりに感じる主の体温、匂い、息遣い。
「主…不安にさせてすまなかった」
「わたしこそ、疑って叩いたりしてごめんなさい…」
「…何も説明していないのに、信じてくれるのか?」
「うん…だって、一松くんだってわたしとおそ松くんの事、疑ってないでしょ?」
なんだ。
あんなに躊躇っていたのに、こんなに容易く仲直り出来たのか。
さっさと素直にさえなれば…。
いや…きっとおそ松兄さんのおかげだろうな。
オットセイも、兄弟達がいなければ今頃どうなっていた事か…。
みんながいて本当によかった。
そして、お前がいてくれて…。
「おれが自分の立場を自覚せず、軽率な行動をしたばかりに…!」
「え?えっと、どういう事?」
(そうか…写真で脅された事を話していなかったな)
「つまりは…だ」
おれは華奢な主の身体を、再び強く抱きしめた。
「もうお前を危険な目に遭わせない。そして、不安になんかさせない。何があったかは聞かないでくれ…思い出すのすら苛立ってしまう」
「うん…わかった。わたしもこれからは、何があっても一松くんを信じるよ」
「ありがとう…主」
…そろそろ、あの事を話す頃合いかもしれない。
「そして今、隠していた真実をお前に伝える……二人の出会いは偶然ではなく、必然だった事を……」
おれは、首にかけたペンダントを外し、主に手渡した。