第53章 番外編 秘密の放課後 F6一松
早く主と二人きりになり話したいというのに…
「キャーーーーッ!!一松様ーー!!」
ファン達が集まってきて行く手を阻む。
おれは周りにバレないうちに、繋いでいた手を離した。
「主、四階の空き教室で落ち合おう。先に行っていろ」
「わかった」
主は、ファンの波に飲まれながらも校舎へと向かった。
一方のおれは、あっという間に取り巻きに囲まれてしまう。
(ざっと百人程度か…仕方ない…)
これは滅多に使いたくないのだが…。
「一松様ーー!!ハグしてーー!!」
「一度でいいから目線くださーーい!!」
おれは立ち止まり、ブレザーとパーカーを脱ぎ捨てると、勢いよくシャツをたくし上げ胸筋と腹筋を見せつけた。
「ハァイッ!!」
「ありがとうございまあぁぁぁあーーすっ!!!!」
百人の女生徒が鼻血を出しながら卒倒する。
(よし、先を急がねば!)
おれは服を着なおし校舎へと入ろうとした。
すると、巨大な影が目の前に立ちはだかる。
おれはその影の主に見覚えがあった。
「貴様はっ!?」
「いぃちまつさまぁーーー!!」
それは、嫉妬と憎悪で殺意の波動に目覚めたこの間のオットセイだった。
オットセイはブクブクと肥大化し、おれの身長の三倍程の大きさになって髪を振り乱している。
例えるならば、巨大なほにゃららデラックスだ。
泣くとオットセイのような声を出す以外は普通の女だったと言うのに。嫉妬という物は、こうも人を醜いバケモノに変えてしまうものなのだろうか。