第53章 番外編 秘密の放課後 F6一松
「やぁ、イチ」
苛立ちを隠せないおれに対し、おそ松兄さんは至ってクールだった。
「主から離れろ!!」
おれが怒鳴ると、両手を挙げてニコリと笑う。
「どうしたイチ?俺はただ、主ちゃんと話していただけだよ」
「嘘だ!」
怒りと共に胸がズキリと痛んだ。
痛くて苦しくて、どうにかなってしまいそうだ。
「本当だって。まぁ、誤解させて悪かったよ。それとも何?彼女を信じてあげないの?」
「!!」
(そうか…主は一週間前、こんなに…)
おそ松兄さん…兄さんはいつだってそうだ。
なんだってお見通しなんだ。
ワザとおれを、一週間前の主と同じ目に遭わせたんだろ?
主の痛みをちゃんと知れって事だろ?
のろまなおれを急かしたんだよな?
…早く仲直りしろって。
「…主、ちょっと来い」
おれは主の手を強く握りしめた。
手を引きながら早足で、誰もいない場所へと向かう。
「いっ、一松くん信じて!本当にただ話していただけで…それであの、わたしね、一松くんに謝りたくて…っ」
「謝るのはおれの方だ!」
「え?」
「……二人きりになりたい」
主は黙って頷いた。
・・・
「がんばれよ。一松、主ちゃん」
おそ松は二人の後ろ姿にそっとつぶやいた。