第53章 番外編 秘密の放課後 F6一松
(主…一体どこにいる?)
教室、食堂、テラス…思いつく場所へ行ったが見つからない。
(もしかしたら、もう帰ったのかもしれないな)
諦めかけた時、ベンチに主の親友の後ろ姿が見えた。
「おい、すまないが主はどこに……ってお前っ!どうした!?」
主の親友は……いや、敢えて省略するが、とりあえず全身ねっちょねちょになり気絶していた。
視線を落とすと、彼女の膝に見覚えのあるハンカチが置いてある。
(おそのハンカチ…という事は、おその仕業か?)
おそ松兄さんのフェロモンには困ったもんだ。
まぁ、おれ達兄弟、みんな似たような感じでファンが何人も気絶したり命を落としたりしているが。
おれ達のファンは常に死と隣り合わせなんだ。
ファンになるのは自己責任でお願いしたい。
あまり強い刺激を与えぬよう気をつけてはいるが、こればっかりはどうしようもないんだ…。
(おそなら主の事を、何か知っているかもしれないな)
まだ近くにいるはずと思いキョロキョロ見回すと、木陰で何かが動くのが目に入った。
——おれは目を疑った。
(おそと……主!!)
おそ松兄さんは主を壁ドンし、いや、壁じゃないから木ドンか?…語呂が悪いな。そもそも壁ドンとは、壁の薄いアパートの隣の部屋から聞こえてくるギシアンや騒音に対し、苛立ちと侮蔑を込めて壁を叩く行為が本来の意味であり、そこから派生した床ドンは、引きこもりニートがご飯を母親に要求する際、二階の床を叩いて知らせるという○チャンネラーの話から生まれた言葉で………ってこんなくだらない事を考えている場合じゃないっ!!
おそ松兄さんが主の唇を奪おうとしている!!
おれだけの姫君の唇をっ!!
柔らかくてなんかいい匂いがして、一度味わえばヤミツキになる主のぷるっぷるを!!!
「何をしてるっ!!」
おれは、怒りに身を任せておそ松兄さんを怒鳴りつけた。