第53章 番外編 秘密の放課後 F6一松
一週間前、いつものように校舎裏へ向かう途中…
「一松様」
体育館裏から誰かに呼び止められた。
無視しようとしたけど、
「来てくれないと、一松様が放課後校舎裏で女とキスしてた写真、みんなにバラまくから」
「…!!」
思わず立ち止まる。
アイドルのスキャンダルに、大事な主を巻き込むわけにはいかない。
おれは苛立ちを抑えながら声の元へと向かった。
声の主は、おれにしつこくつきまとうファンの内の一人だった。
「何が望みだ?」
「抱いて」
「…写真のデータを消せ」
女はしぶしぶデータを消去した。
「一松様…消したよ。ねぇ、抱いてよ!」
醜くおれにすがってくる女。
「おい、削除してもゴミ箱にまだ残ってるだろ?早くゴミ箱から消去しろ」
「…チッ」
コイツ本当に女か?女ってこんなに醜悪な顔をして舌打ちなんてするのか?
おれがよく知る女は、そんな事一度だってした事ない。
いつだって可愛くて愛しくて、時々ワガママで…猫のように魅力的なんだが。
女が消去したのを確認した後、念には念を入れてSNS、メール、全部くまなくチェックした。
主との約束の時間はとうに過ぎていた。