第53章 番外編 秘密の放課後 F6一松
始めは主もみんなと同じで、おれに対し色目を使ってくると思った。
そして、ついに猫と過ごす時間すら奪われてしまったと思った。
けれど違った。
「ごめんね、お邪魔しちゃった。一松くんがここに来てるの、みんなには内緒にするから」
そう言って主は、猫を下ろしすぐに帰ろうとする。
「待て」
「え?」
「何故だ?何故内緒にすると言った?」
自分自身も何故かは分からないが、思わず話しかけていた。
主は困ったように瞳を揺らす。
「ええと、F6って大変そうだから…。いっつもみんなの注目の的だし」
「大変そう…だと?」
「わたしなんか一般人だから、人気者の苦労なんて分からないけれど、毎日置いてあった餌で分かるよ。一松くんが、この子と過ごす時間をとっても大切にしているって…」
そう言って、無邪気にニコリと微笑んだ。
「だから誰にも言わないよ?わたしも来ないようにするから」
「いや、お前は来い」
「え…?でも…」
「いいから放課後毎日ここへ来い。いいな」
「?」
笑顔に一目惚れした、とは言えなかった。
そうして、おれ達は放課後二人きり秘密を共有し、次第に距離を縮め、自然と抱き合い自然とキスをし、自然と恋人になった。