第53章 番外編 秘密の放課後 F6一松
カラ松兄さんと別れた後、おれは一人、校舎裏に住み着いている猫の元へ向かった。
帝国の支配とうるさいファンから逃れ、猫と向き合える時間は、おれにとって何ものにも代えがたい時間だ。
いや……違う。
本当は…主、お前と過ごす時間が——。
「うにゃあー」
「どうした?甘えて」
猫缶を開けて地面に置くと、おれは擦り寄ってきた猫をそっと抱きしめた。
「そういえば、アイツと付き合うキッカケを作ってくれたのはお前だったな」
猫の温もりから、心温まる思い出が蘇ってくる。
おれは懐かしむように目を閉じた。
あれは…桜が舞う、この学校へ入学したばかりの頃——
・・・
仕事も学校もプライベートも、どこにいても何をしても、いちいち周りにつきまとわれ煩わしかった。
兄弟はきちんとアイドルしてたけど、当時のおれは苦痛でしかなくて…。
取り巻きから逃れ、学校に住み着いた野良猫と過ごす時間が何よりも好きだった。
唯一猫だけが、兄弟以外に素を見せられる相手だった。
いつものように猫に会いに行くと、あげた覚えのない餌が目に入る。
(誰かいたのか?)
おれが辺りを見回すと、
「いつも餌あげてたの…一松くんだったんだ」
「っ!!」
クラスメイトのyou主が、猫を抱きながら木に寄りかかっていた。