第53章 番外編 秘密の放課後 F6一松
一松視点
ようやく放課後になった。
人目を避けるように歩いていると、十四松とトド松が前から歩いてくる。
「一松兄さん、ちょうどよかった!テラスで一緒にマカロンとアールグレイなんてどうっ?いつもみたいに女の子もたっくさん集まってるよ」
「悪いがおれは行くとこがある」
「ちぇーっ、じゃあ十四松兄さんと二人で女の子三百人相手かぁ。なんで毎日、ボク達がお茶してるだけで握手待ちの列が出来ちゃうんだろうね…」
「アッハハ、イチは女の子よりも猫の方が大事なんだよ。あっ、それとも主ちゃんかな?」
おれは返事をせず片手を挙げ二人から去った。
長い廊下を歩いていると、今度はカラ松兄さんに出くわした。
「イチ、どこ行くんだ?」
「…猫に餌をやりに」
「そうか…なぁ、イチ」
歩き出そうとしたおれの肩をカラ松兄さんが掴む。
「……なんだ?」
「最近のお前、一体どうしちまったんだよ?死んだ魚の眼しやがって」
「……」
「オレで良ければ話聞くぜ?」
おれはカラ松兄さんの手を払いのける。
「別に…何もない」
「チッ、そうかよ」
おれはまた歩き始めた。
けど、
「カラ…」
しばし立ち止まる。
「あ?」
「…ありがとう」
「…おう」
そのまま振り返らず歩き始めると、「調子狂うぜ」とカラ松兄さんは呟いた。