第53章 番外編 秘密の放課後 F6一松
一松くんと話さずに一週間が過ぎた。
あの日からわたしの日常は色褪せていき、何も楽しくないし勉強もはかどらない。
唯一の心の拠り所は、放課後モブ代と二人、ガールズトークをする事だった。
「あんたさ、まだ一松くんと話してないの?」
「うん…はたいちゃったから気まずくて…。それに、話しかけるのは向こうからなんじゃないの?あんな事しておいて!」
「そうだけど、なんてゆーか、一松くんって六人の中でも一番マイペースというか、口下手というか…あんたの誤解かもよ?」
「誤解で何で女の子がおっぱい丸出しで抱きついてんの?パンをくわえながら、曲がり角でぶつかった拍子におっぱい飛び出したって!?」
声を張り上げると、モブ代は驚くどころか笑い出した。
「アッハハハハッ!!それはありえないね!!」
「もういいんだ。だって一松くんだもん」
食欲がなくなり、食べかけのクッキーをビニールにしまった。
「住む世界が違うし、釣り合わないし…飽きて捨てられたんだ」
「一松くんはそんな人じゃないと思うよ?」
「でも…」
「主ちゃん、ちょっといいかな?」
ベンチに腰掛け二人で話し込んでいたら、不意に後ろから声をかけられた。
先にモブ代が振り返ると、震えだし身体中の穴という穴から体液を垂れ流し始める。
…内容は敢えて省略。
「モブ代!?どうしたの!ものすごく汚いよ!?」
これでは汚ブ代である。
「おやおや、子猫ちゃんたら…」
もうお気づきだろう。
声の主は、モブ代が神推しのおそ松くんだった。
おそ松くんは、泡を吹き出したモブ代の顔を真紅のハンカチで拭い、そのままモブ代の膝に置く。それがトドメとなり、モブ代は恍惚の表情を浮かべたまま気絶してしまった。
「おそ松くん…ど、どうしたの?」
「一松の事で話があるから、こっち来てくれるかい?」
わたしは頷き、おそ松くんに連れられ人気のない木陰へと向かった。