第53章 番外編 秘密の放課後 F6一松
「主!?」
一松くんがわたしの方へ駆け寄ってくる。
「いやっ!来ないで!」
わたしは唇を噛み締めながら走った。
「待てっ!」
けれど、一松くんの足の速さには勝てなくて…。
「待てと言っている!!」
すぐに腕を掴まれてしまった。
感情の器が決壊し、視界が滲みながら一松くんを睨みつける。
冷静な判断なんて出来なくて…
「人の話を」
「バカァッ!!」
—パシィッ!—
一松くんの頬をはたいてしまった。
反撃されると思ったけれど、彼は頬を押さえたまま何もしてこない。
わたしは心のどこかで期待した。
あれは誤解、間違いだって言って欲しかった。
それなのに、彼は否定も肯定もせず、
「…気がすんだか?」
そう一言だけ呟いた。
気がつくと、いつの間にか雨が降り始めていた。
・・・