第53章 番外編 秘密の放課後 F6一松
一時間経った。
わたしは、ため息と共に歩き出す。
(しょうがないよ。一松くんは忙しいんだから。こういう日もあるよね…)
不安で押し潰されそうな心を必死に励ます。
マイナス思考になってはダメだ。
彼を信じないと。
校舎裏から出て体育館を横切ろうとした時、
「ん…うぅ……」
体育館裏から女の子の呻くような声が聞こえた気がした。
気になったわたしは、そうっと目を凝らし薄暗い体育館裏を覗き込む。
すると、そこにいたのは…
(そんな……どうして…?)
胸をはだけさせ抱きつく女生徒と一松くんだった。
信じたい。
信じたいけど。
でも、どうしろと言うの?
信じるって何?
信じる事と、事実を都合良く解釈する事の違いは何?
もう…なにも信じられないよ…。
気づかれぬ内にその場から逃げようとしたけれど、落ちている木の枝を踏んでしまった。
音に気づき、振り向いた一松くんと目が合う。