第52章 番外編 神松育成ストーリー(読切逆ハー裏)
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貯金を切り崩して一人飲んだくれていたある夜…。
行きつけの安い居酒屋に賑やかな六人組がやってきた。
「うるせーよぉ〜働け働けってぇ〜!テメェだってニートだろぉ?」
「おそ松兄さん飲みすぎ!チョロ松兄さんも謝って!」
「えぇ〜?何を謝れって〜?」
「『同じ無職童貞なのに、調子に乗ってすみませんでした』って早く謝って!」
ヒドい会話だ。酔っていても分かる。ヒドい六人組だ。
「おいコラトド松ー!おめーも一緒だろ〜がっ!ケツ毛燃えるわっ!!」
「アッハハ〜もえるもえる〜!!」
なんて品性下劣な会話なんだろう。
まぁ、酔った男なんてみんなこんなもんか、なんて思いながら、カウンター席から六人をチラ見する。
(あの人達は…)
そこにいたのは、近所ではちょっとした有名人な六つ子だった。
そりゃあ六人同じ顔、色違いのパーカーで歩いていたら嫌でも目につく。
……元彼はパチンコが好きな人で、いつも行く度に同じ顔が並んで打っているって言ってたっけ。
ズキリ
…いい感じに酔って忘れかけていたのに、また元彼を思い出してしまった。
わたしはグビリと熱燗を一気に飲み干す。
「すみませーん、あつかんおかわりぃ!」
わたしが叫ぶと、ピタリと六人組が静かになった。
なに?女が一人でやっすい酒飲んじゃダメなの?
人の事はほっといて仕事探せば?
…そういえば、この人達さっき童貞って言ってたっけ。
(ちょっとだけ絡んでみようかな…)
わたしは熱燗を持って、六人の席に向かった。
「こんばんはー!同じ顔のおにーさん達」
それはただの興味本位。
童貞達を手玉に取り、傷ついた自尊心を満たしたいという、実にくだらない動機で話しかけたのである。
振られたけれど、こう見えても交際中、何人かに告白された事はあったのだ。
女としての自信を回復させるには、うってつけな六人だった。
わたしは、ワザとミニスカートで脚を組み、胸元をはだけさせながら、赤いパーカーの人の隣に座った。
「一人で寂しく飲んでたの。一緒に飲まない?」
童貞達は、戸惑いながらも受け入れてくれた。