第49章 みんなよくやるよね… 一松
主人公視点
不器用な一松くん。
付き合い始めて「好き」と言ってくれたのは一度きり。
でも、言葉は無くても気持ちはいつも伝わっていた。
時にはすがるように、時には無理やり乱暴にわたしを求めてくれたから。
そんな彼なので、ごくたまーに見せる素直さの破壊力といったら…。
わたしの心は、不器用ながらにまっすぐな彼の一言に鷲掴みにされてしまった。
わたしが返事をした途端、
「もう…やめてっつってもムリだから」
手首を掴まれ、わたしを床に押し付けるようにして一松くんは覆い被さった。
声を出そうと微かに唇を開いた瞬間、一松くんは口を塞ぐように柔らかな舌をねじ込む。
言葉は途絶え、艶やかな唾液の混ざり合う音が響く。
キスをしながら二人は指を絡ませた。
一松くんのキスはとても情熱的で、息をする暇が無いほどに舌を吸い絡めてくる。
思いが剥き出しなたまらなく愛しいキス。
そんな彼に応えるように、わたしも拙く舌を動かした。
・・・
時間を忘れキスに没頭していると、不意に唇が離れる。
「……主」
「…なぁに?」
キスが止むと肺に酸素が沢山入ってきた。
一松くんもはぁはぁと呼吸を整えている。
「…温泉……楽しかった?」
「急にどうしたの?」
「……」
あ、質問に質問で返しちゃダメだよね、とすぐに返事をする。
「うん、楽しかったよ。久々に高校時代の友達と会ったから」
「ともだち……」
一松くんの声色がどこか寂しさを纏っていた。