第49章 みんなよくやるよね… 一松
話を聞けば、旅行から帰って一旦家に荷物を置き、すぐうちに来てくれたらしい。
玄関で鉢合わせ、そのまま二階に招き入れると、主は床に散らばった麻雀牌が目に付いたようだ。
「これ、どうしたの?」
「三途の川ごっこしてた…」
「またそんな病みそうなひとり遊びを…」
余計なお世話。
べつにもともと病んでるし。
それに…
(お前が、かまってくれなかったから…)
とは思ったものの、言えるわけもなく。
「……」
いつも通り、気の利いた言葉一つも言えないまま黙り込む。
(でも…)
会えてよかった。
誰より何より…主、お前に会いたかった。
(思うだけなら、いくらでも素直になれるのに…)
…みんなそうか。
「ふふっ、じゃあ二人で三途の川ごっこしよっか?」
「あ?」
「わたしもやってみたくなっちゃった!」
そう言うと、主は床にペタンと座り込んだ。
「で、どうやって遊ぶの?」
待ちきれないって目で見てきたから、おれも渋々主にくっつくようにあぐらをかいた。
…膝に、主の柔い太腿がぶつかる。
(ヤバい…久々に会ったからこれだけで興奮してきた)
平静を装い、牌を親指と人差し指で摘まんだ。
「これをまず一列に横に並べて…」
「うんうん」
「…ピラミッドみたいに積んでく」
「ふむふむ」
主からいい匂いがして、胸がドキドキするのをこらえながら、震える手で牌を重ねていく。
「で…」
グシャッ
「崩す」
なんでだろ。
さっきはクソつまんなかったのに、主と一緒ってだけでものすごく楽しい。
きっと、主も目を輝かせているに違いない。
そう思って主を見ると、
「………」
無表情で黙り込んでいる。
「…人がせっかく教えてやってんのに、何黙ってんの?」
「えっと…こ、これだけ?」
おれがコクリと頷くと、なぜか主が吹き出した。