第49章 みんなよくやるよね… 一松
一松視点
昼寝から目覚めるとひとりぼっちだった。
ムクリとソファーから起き上がる。
(いつもこの時間、みんな部屋でダラダラ過ごしてるのに…)
膝を抱えて座り込む。
(…何しよう?)
選択肢が思い浮かばないほど暇なんですけど。
おれなんか、趣味もなければ生きる気力もない、廃品回収待ちの燃えないゴミだし。
こんなおれをかまってくれるのは猫だけ。
いや…猫ときどき兄弟だけ。
やっぱり……猫ときどき兄弟と———主だけ。
…けっこういるかも。
「ケッ、なに調子乗ってんだ、おれ」
主はと言うと、おれを棄ててトモダチと温泉旅行だって。
なにそれ?なんでワザワザ金払って、他人とメシ食って風呂入って寝なきゃいけないの?
めんどくさ。
気ぃ使って一晩で胃に穴空くだろ、それ。
みんなよくやるよね。周りに合わせてさ。
「……」
(主…ぼくとは温泉行ってくれないの?)
「ーーーっ!!」
か、顔が熱くなってきたから…とりあえず、麻雀牌でひとり三途の川ごっこをする事にした。
石を積んで鬼に崩されるアレだ。
積み上げては崩し、積み上げては崩し…それの繰り返し。
カチ
カチ
グシャッ
「……」
…つまんなかった。
想像を絶するつまらなさだった。
こーゆーのは、兄弟が話してるのをなんとなく聞きながらやるのが楽しいんだ。
あとおれがする事といえば、ひとつだけ。
(猫ににぼしでもあげに行こう)
にぼしの袋を持って階段を降り、玄関の引き戸をを開くと…
「ぬぁっ!?」
「キャッ!」
目の前に、今まさにチャイムを鳴らそうと人差し指を立てた、おれだけのお客さんがいた。