第44章 続・一松事変 〜作者リク作品〜
主人公視点
家に着くと、カラ松くんは一松くんを叩きつけるように乱暴に降ろした。
廊下で気絶したまま目を覚まさない一松くん。
(ひどい!こんな人だったなんて!)
・・・
話は遡ること三十分ほど前。
おうちデートのためにDVDを選んでいる時、後ろからカラ松くんに一松ガールと声をかけられた。
「どうした?一松は一緒じゃないのか?」
「こんにちは!今日は仕事休みだったんだけど、店長に呼ばれて少しお店に顔出してきたの。たぶん一松くん遊びに来るだろうから、何か借りて行こうと思って」
「そうか。きっとあいつも、早く会いたがっているだろう」
カラ松くんは、片方だけ口角を上げて微笑んだ。
彼と話すのは今日で二回目だ。
時々発言が謎だけど、弟思いの良いお兄ちゃんという印象。
優しいお兄ちゃん、それがカラ松くん。
カラ松くんはわたしが相談すると、快く一緒に選ぶのを手伝ってくれた。
「一松くんてラブコメ苦手だよね?」
「そうだなぁ…一松は、これとか好きだぞ」
カラ松くんが手に取ったのは、
(ハソニバルかぁ…。確かに、こういう猟奇的なの好きそう)
サイコホラー系の映画だった。
「怖いけど、チャレンジしてみようかな。じゃあまずは一作目の子羊たちの沈黙から……あったあった」
わたしがDVDを棚から取って振り向くと、いつの間にかカラ松くんはいなくなっていた。
・・・
そして、トイレから戻ってきて今に至る。
「カラ松くんっ、さっきから乱暴すぎるよ!いくらお兄ちゃんでも、やっていい事と悪い事があるっ!」
「そうかぁ?それはそれはアイムソーリー!」
そう言いながらも足蹴にした。
「やめてっ!」
わたしが一松くんを庇うように抱きしめると、カラ松くんから禍々しいオーラが発せられるのを感じる。
(この感じ、怒らせちゃった時の一松くんと…似てる)
兄弟みんなこういう一面があるのかな。
「クッソ殺してぇ…けど、面白くなってきたかも…ヒヒッ」
「い、一松くんみたい」
「ノンノン、カラ松ですけどー?」
室内なのにサングラスをかけたまま、カラ松くんは不気味に笑った。