第43章 ※十四松に音楽会を 〜作者リク作品〜
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(もうすぐ開演時間…)
目覚まし時計を眺めながら、公園のベンチに座り込んでいたら、
「十四松…」
一松兄さんが来た。
「………これからは…その…戸締り気をつけるから——ごめん」
一松兄さんは、何にも悪いことしていないのにぼくに謝った。
そして、泥だらけになった姿で、泥だらけになった招待券をぼくに渡してくれた。
「……はい」
「!!」
「…これで、この間の猫の借りは返せたな」
(猫の借り?エスパーニャンコのことかな?あれはぼくが悪かったんだよ。一松兄さんを、無理やりデカパン博士の所へ連れて行ったから…)
「一松兄さん…ぼく、ぼくね…」
伝えようと思ったのに、なぜだか上手く話せない。
ワタワタしていたら、兄さんはぼくが抱えていた目覚まし時計を指差した。
「ねぇ……早く向かったら?」
「ぐっは!!」
言われて思い出した。
そーだった!!
もうすぐ始まっちゃう!!
「一松にーさんっ!!ありが盗塁王ー!!」
「グフッ!?」
ぼくは、思いっきり一松兄さんをハグして頰ずりした。
途中めきゃって音がして一松兄さんが動かなくなったけれど、精一杯ありがとうを言いながらギューってした。
一松兄さんは眠っちゃったから、そのままベンチに寝かせてあげて、ぼくはコンサート会場までダッシュで向かった。