第6章 五男と性欲
「ね、今から久しぶりに河川敷行こうかっ!」
わたしは明るい声で誘ってみた。
けれど…
「……」
十四松くんは返事をせず、だぼだぼな黄色いパーカーを不機嫌な猫の尻尾のように、わたしの背中にペチペチと打ちつけている。
(こ、これはイヤだってこと…かな)
「…もう少しこうしてよっか?落ち着いたら河川敷行こう?」
「おっぱーーい!!!」
納得したようだ。
「はいはい、おっぱいはわかったから…。ん?もしかして、野球よりおっぱいの方が好きになっちゃった?」
「ボゥエッ!!」
胸に顔をうずめたまま破裂音を発音されたので、胸が振動でビリビリした。
「ちょっビックリした!えっと、つまり…どっちも好きなんだね?」
「甲乙つけがたいぜっ!!」
「あははははっ!!!!」
相変わらず彼と過ごす時間は飽きることがない。
部屋で二人でくつろぐ時は、大体いつもこんな感じである。
おしゃべりしながらじゃれあって…。
それはそれは、楽しくて幸せな時間だ。
でも…最近少し物足りないような…。
恋人同士なら、もう一歩踏み込んだ関係になってもいいんじゃないかな?
はたして十四松くんに、そういう欲ってあるのだろうか?