第6章 五男と性欲
「あははっ!!くすぐったい〜!」
オーケストラの定期公演が終わった次の日、久々に一日オフなわたしは十四松くんと部屋で戯れている。
「主ちゃんはねー、なんか優しい匂いがするー!」
「や、やめてやめてっ!首はくすぐったいってば!」
十四松くんは、犬みたいにわたしの首筋を鼻でクンクン嗅いでくる。
わたしが嫌がって肩をすくませると、ピタッと動きが止まった。
「十四松くん?」
と思ったら…
「おっぱーーーい!!!!」
「うわーっ!?」
今度は、わたしの胸に顔を埋めて甘えてくる。
「なんか、今日はいつにも増して甘えんぼじゃない?どうしたの?」
「わかんなーい!でもね、早く会いたかったんだ!」
「…そっかぁ。忙しくて…ゴメンね…」
わたしは彼をふんわり包み込むように抱きしめた。
・・・
オーケストラ入団をキッカケに、わたし達の日常は大きく変わった。
わたし達というか、正確にはわたし一人だけれど…。
それまで勤めていたコンビニを辞め、オケのリハーサルや本番に忙殺される毎日。
時間が空けば、吹奏楽指導や個人レッスンなどで一日費やし休日も殆んど音楽漬け。
そんなわけで、二人を結びつけた河川敷デートはずっとおあずけ状態だった。