第42章 番外編 F6 おそ松とお嬢様
「そうねー、一言で言えば…気持ち良くてスッキリすること…だな!」
「気持ち良くてスッキリ?おなにーとはつまり、気分転換の事ですか?」
「そうそう!それ近い!ねー主ちゃん!オナニー大好きって言ってみ?」
「…おなにー大好き?」
「やべーーっ!!サイコーー!!」
大袈裟に喜びながら、テーブルをバンバン叩くおそ松。
何故、この人はこの単語を言うだけでこんなに喜ぶのだろう?
(もしかしたら、おそ松はわたしを気分転換させに来てくれたのかな?)
嫌で嫌で仕方がない、ハタ坊様との結婚を忘れさせてくれるために…?
でも——忘れるだけじゃ嫌。
「おそ松…」
わたしは、おそ松に賭けてみる事にした。
自分の思いをぶつける事にした。
「どした?」
「…おなにーだけでは、嫌なのです」
「へ?」
「わたしを、どこか遠くに連れて行って…!もう、お父様の言いなりなんて、ウンザリなのです!!」
わたしがそう伝えると、おそ松は鼻の下を擦り微笑んだ。
「へへっ、そういう夢を見たいのねっ。楽勝楽勝!」
途端、おそ松がモクモクと煙に包まれる。
(こ、今度は一体何なの!?)
煙に咳き込んでしまい、床に伏せ口元を押さえた。
「ゲホッ、ゲホッ!な、何よこれ!?」
おそ松、まさか煙幕で逃げちゃうの?
「いやっ行かないで!」
煙の中に手を伸ばす。
すると、白く細長い指がわたしの手を掴んだ。
「いいよ。何処へでも連れて行ってあげる。二人だけの世界へ…ねっ?」
煙から現れたのは、白いスーツに身を包み、赤髪で長身の美しい青年。
その青年は、おそ松と名乗った。