第42章 番外編 F6 おそ松とお嬢様
「ってゆーかさ、お前が俺を呼んだんでしょ?」
ムシャムシャと勝手にテーブルの上の軽食を頬張りながら、その男は言った。
「わたしがあなたを呼んだ?大体あなたは誰なのです!」
「松野おそ松でーす」
「お粗末?名前通りの方ですね」
「いや字が違うから、おそ松ねおそ松」
あっけらかんと名乗るおそ松。
様子を見ていたら、怪しいけれど、危険な人物には見えない。
(悪意があるようにも思えないし…)
わたしは、もう少しこの男の素性について探る事にした。
「おそ松、わたしはyou主です」
「はいはい知ってまーす。律儀にちゃんと名乗って、育ちが良い事この上ないね〜」
この男は…。
さっきから、わたしのことをバカにして!
でも、聞き出すまでは我慢しないと。
「あなたは一体、何をしにわたしのところへ来たのです?」
「ん?お前が退屈そうにしながら、俺の事を待ってたから来たの。ったく、こんな夢見るとか現実で欲求不満ってこと?ちゃんとかまってんのによ〜。なんかショックだわー」
何を言っているのかよく分からないけれど、とりあえずは一番気になったことを聞いてみる。
「わたしがあなたを待っていた?」
「そ。それに…」
おそ松は、またニーッと笑う。
「お前さ、寝る前俺とのセックス思い出しながらオナニーしたでしょ?イク時に『らめー!おしょまちゅきゅうん!!』って呼ばれちゃったら、俺も行くしかないわけで」
「おなにー?おなにーとは何です?」
「あー!俺の事、今オナニートって呼んだ!!もーやだっ!!立ち直れなーーい!!」
おそ松は何故かいきなりぐずりながら、床をゴロゴロと転がり始めた。
こんなに騒いだら屋敷の者に気づかれてしまう。
「ち、ちょっと落ち着きなさい!『おなにーと』なんて言っておりません!『おなにー』について何なのか気になって聞いただけです!」
「え?この設定のお前『オナニー』知らねーの?」
「設定…?え、えぇ。教えてください。『おなにー』って、何ですか?」
わたしがそう聞くと、おそ松は「ひゃっほ〜い」と謎な言葉を発し、嬉しそうに飛び上がった。