第42章 番外編 F6 おそ松とお嬢様
こんな時間に窓を叩かれたら、誰だって警戒し恐怖を覚える。
だけど、この時のわたしは違った。
泥棒でも不審者でも宇宙人でも何でも良かった。
この世界から抜け出させてくれるのならば、どんな事だって受け入れる。
(もういいのです。ここに閉じこもってるのもいい加減ウンザリしていたし)
つまりは、自暴自棄になっていた。
鍵を外し窓を勢いよく開けると、夜風と共に舞い込んで来たのは…
「っかぁーーっ!さーむかったーー!!」
赤いパーカーを着た謎の青年だった。
「あらら…主ちゃんったら、こんな少女趣味な夢見ちゃって。かーわいーい!」
「な……っ!?」
(いきなり人の部屋に入り込んできてなんて失礼な!しかも、どうしてわたしの名前を知っているの!?)
どんな事だって受け入れようとしていた、三十秒前の自分をはたきたい。
こんな人、受け入れられない。
だけど、お嬢様らしくあろうと毅然とした態度で振る舞う。
「あなたは誰ですか?なぜ、このような時間にわたしの部屋の窓を叩いたのです?」
「わぁーっ!それ乳首スッケスケ!でも、デザインがそそらないなぁ〜」
「っ!!」
言われて気づき、顔を真っ赤にしながらカーディガンを羽織った。
「な、なな何なんですか!屋敷の者を呼びます!!」
テーブルに置いてあった呼び鈴を鳴らそうとすると、ヒョイと奪われてしまう。
「ふーん、ここから逃げ出したいと思ってるくせに、こういう時は都合良くお嬢様なの?」
「あなた、どうしてそれを!?」
赤いパーカーの男は、ニーッと歯を見せて笑った。