第41章 番外編 F6 十四松先生と二重奏を コーダ
二人きりの演奏会が始まった。
おどけるように転がり回るピアノの上で、トランペットのメロディが可愛く跳ねる。
「ここはねー、部員達をまとめようと悪戦苦闘している主!」
楽しそうに弾きながら、先生は曲のイメージを言葉にしていく。
「次はおそ松が出てくるよ!」
ジャーンと場面転換のようにコードが鳴ると、
(これ…コンクール曲のわたしとおそ松くんのソリだ!)
聞き馴染みのある二つの旋律が奏でられる。
「アッハハ!出版予定無いから、著作権なんてカンケーなーーい!!」
必死になって音符を追いかけ音にすると、わたしの旋律はカラ松くんが廊下でよく吹いていたジャズスタンダードの一曲だった。
途端、曲の雰囲気はジャジーになり、先生の左手はジャズの4ビートを刻み始めた。
そして右手は、なんだかしっちゃかめっちゃかして難解なフレーズを弾いている。
「この右手はねー、チョロの頭の中!12音技法スパイラル!!」
解説してくれたけれど、全く理解できなかった。というか、あんな難しそうなパッセージを軽々と弾ける先生に驚く。
カラ松くんとチョロ松くんのメロディが終わると、曲調がポップな感じに変わり、トランペットは再び冒頭のわたしのテーマになった。
「次はね、トド松と女子部員!ここはけっこう可愛く書けたんだ!」
わたしのテーマは同じなのに、伴奏が違うだけで全く別の曲のように感じられた。
ピアノは高い音階を楽しそうに奏で、まるで、トド松くんが女子部員達とガールズトークしているみたい。
わたしの目から涙がこぼれ落ちた。