第40章 番外編 F6 十四松先生と二重奏を 第三楽章
一松くんのキスは、松野先生のそっと触れられた優しいキスとは全然違った。
わたしの口内を乱暴に掻き混ぜ、欲望の赴くままに舌と唇を噛んで吸い付いてくる。
唇が離れれば、透明な糸が二人の粘膜を伝った。
「十四松にこうやって犯されてさ…気持ちよかったんだろ?」
「…やめて……っ!」
「おれ達がコンクールに向けて頑張っている時に、二人で盛り上がってたくせに」
乱暴にシャツのボタンを外され、ブラジャーが露わになる。
「先生は、こんなことしてないっ!」
「嘘だ」
「っ!!」
強引にブラをずらされ、初めて男の人に胸を見られてしまった。
「こんなに愛らしい胸を、アイツは…アイツは…っ!」
一松くんの手が、胸を乱暴に揉みしだく。
「やだぁっ!!やめ…て…!!」
泣きながら懇願しても、哀しみが込められた愛撫は止まらない。
舌が乱暴に胸の先端を転がす。
痛さとビリビリする快感が混じり、感じるたびに心を抉られ涙が頬を伝った。
先生…。
初めて見られるのも触れられるのも…先生に捧げたかった…。
それなのに…。
——ガサッ
カバンがベンチから落ちた拍子に楽譜が散乱した。
先生が、わたしのために作曲してくれた二重奏の音符が見える。
楽譜を見た時に、松野先生との約束を思い出した。
(たとえ今触れ合えなくても、愛の言葉がなくても、音に乗せてわたしと先生は…)
ごめんなさい一松くん。
わたしは…一松くんの気持ちに…。