第40章 番外編 F6 十四松先生と二重奏を 第三楽章
主人公視点
掃除の後引き継ぎが終わり、飽きるほどおしゃべりをした部員達は一人、また一人と帰って行った。
松野先生は職員会議で職員室。
最後に残ったのは、わたしと一松くんの二人だった。
「主、一緒に帰るぞ」
「え?お迎えのリムジン来ているんじゃ…?」
「引退した日に、副部長と語らいたいと思うのは間違っているか?」
わたしは照れくさくなり、無言で首を横に振った。
「えっと、おそ松くん達は?」
「兄さん達とトドは、父さんの知り合いの社長に誘われナイトクルージングだ」
「すごいなぁ。みんな忙しいんだね」
もう少し話したかったのにな、なんて思ってしまう。
だけど、やっぱりみんなは雲の上の存在だった。
「おれはおそ松から、お前を家まで送り届けた後、ヘリで向かうようにと言われている」
「いやそこまでして貰わなくてもいいよ!?ヘリとか凄すぎるし…」
「みんな本当は、お前ともっと過ごしたかった。その思いをおれが代表して引き受けたんだ。だから、何と言われようとおれはお前と帰る」
一松くんはわたしの前で跪いた。
(一松くん…みんな…)
「我が愛しの姫君、貴女をご自宅までエスコートさせていただきたいのですが?」
わたしは、しどろもどろしながらも跪く彼に手を差し出すと、チュ、と軽く手の甲に口付けられた。
「ありがたき幸せ」
初めてのお姫様扱いに、胸の奥がとってもくすぐったくなった。