第40章 番外編 F6 十四松先生と二重奏を 第三楽章
あの日…アイツらの二重奏が聴こえてきた日。
何となく予感はしていた。
十四松がここ最近、毎日唸りながら作曲していたのは、トランペットとピアノの二重奏。
主の為に書いているってすぐ分かった。
案の定学校へ戻れば、夜の音楽室から響き渡る二人の音色。
主の演奏はぎこちなかったけれど、楽しそうに音が弾んでいた。
でも、八つ上の十四松を子供の頃から見てきたおれは、どうしても主とアイツを引き離したかった。
——リムジンに毎日違う女を乗せて出かけている十四松を知っていたから。まぁ、教師になる前の話だけど…。
だから、おれは主のナイトになると誓ったんだ。
アイツが弄ばれて傷つく姿なんて絶対に見たくない。
アイツはおれが守る。
そう、思っていただけなのに。
なぁ、主。
どうして、おれは今…主を泣かせているんだろうな?
どうして、泣きじゃくるお前を…おれは…無理やり——。