第40章 番外編 F6 十四松先生と二重奏を 第三楽章
音楽室に戻ると、部長であるおそ松くんと副部長であるわたし、学生指揮者だったチョロ松くんが部員の前に立ち、次の二年生へと引き継ぎをした。
部員の殆どは涙を流し、F6である五人の引退を惜しんだ。
F6は、わたし達にとって憧れであり、一緒にいるだけで夢を見させてくれるような、特別な存在だった。
だから、副部長のわたしなんか、影に隠れて何とも思われていないだろうなぁ、なんて思っていたけれど…
「ヤンチャな僕達をまとめ上げてくれた、しっかり者の副部長主に、ありがとうを伝えたい!!」
おそ松くんが、最後の部長挨拶でそう言うと、みんながわたしに暖かい拍手をくれた。
こんな事を言われたら、泣いてしまうに決まっている。
「おそ、それだけではありません。三年生全員が、私達を支えてくれたじゃないですか。そして、後輩達も…。皆さん、本当にありがとうございました!」
さすがチョロ松くん。とても綺麗にまとめて、わたし達を涙の渦へと誘う。
涙をダラダラと流し始めたわたしを見て、三年生をはじめ、後輩達もポロポロと泣き始める。
涙と共に、三年間の思い出が溢れ出す。
大好きだった吹奏楽。
好きだから、唇が切れるほど練習した。
好きだから、時が経つのを忘れ没頭できた。
好きだから、辛くて逃げ出したくなった。
好きだから、悔しい思いをしても続けてこられた。
好きだから、わたしの高校生活全てを捧げてきた。
あぁよかった。
こんなに素敵な仲間と共に音楽が出来て。
みんな、ありがとう。
きっと大人になっても、吹奏楽部で過ごした三年間を絶対に忘れない。
いつまでも、おばあちゃんになっても…。
「みんなー、目がまっかっかーー!!」
そう言う松野先生が、誰よりも泣いていた。