第40章 番外編 F6 十四松先生と二重奏を 第三楽章
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(よし、見違えるほどキレイになった!)
三年間お世話になった部室の床を、雑巾でピカピカに磨き上げた。
今日は、三年生総出で音楽室と部室の掃除をしている。
コンクールが終わった後、三年生が掃除をするのがうちの部の恒例行事だ。
感謝の気持ちを込め、部屋を徹底的に掃除するのである。
全国大会の結果は金賞で第三位だった。
一位は第四銀河高校、二位は聖澤高校。
悔しくてみんな涙を流したけれど、松野先生はいつまでもニコニコ笑っていた。
そしてなぜか、フジオ会館の砂を持ち帰り、瓶詰めにして大事そうに準備室に飾っている。
「主ちゃーーんっ!クモ怖いよー!!」
「キャッ!?」
いつものノリでトド松くんが後ろから抱きついてきた。
すると、すぐさま隣にいた一松くんが二人を引き離す。
「クモはおれが外へ逃がしたから離れろ」
「一松兄さんっ、ありがとう!」
キャピッと笑顔を向けるトド松くんに、一松くんはフッと口元を緩めた。
「礼には及ばない」
「じゃあ、あっちの隅にいたネズミも何とかしてくれる?」
「…ネズミまでいるのかこの部室は」
二人の仲の良いやり取りに、クスッと笑顔がこぼれた。
だけど、何気ない日常はもうおしまい。
部活を引退したら、いよいよ受験に本腰を入れなければならない。
こうやって、みんなでワイワイ過ごせる時間とは、もうさよならなんだ。
人知れず感傷に浸っていると、
「ワッ!!」
「わぁっ!!」
後ろから松野先生に驚かしてきた。