第39章 ※番外編 F6 十四松先生と二重奏を 第二楽章
音楽準備室におそ松くんと入ると、「他の先生にはナイショ」と言いながら、松野先生はアイス代を渡してくれた。
受け取ったその時、さりげなく手を包み込まれる。
久々に先生が触れてくれたのが、嬉しいのに苦しくて。
本番一週間前だというのに、音が出なくなった自分が惨めで情けなくて。
会わせる顔が無く、思わずパッと手を振り払ってしまった。
「…ありがとうございます。では、行ってきます!」
「うん、よろしく!おれはパフェね!」
「わかりました…」
わたしとおそ松くんが準備室を出ようとした時、一松くんが入ってきた。
「片付け終わったからおれも行く」
「あぁ、構わないよ」
おそ松くんはそう言ったけれど、松野先生は一松くんに向かい手招きをしている。
「イチはぼくの手伝いしてくれる?」
「あ?手伝いなんて無いだろ?」
「あるあるーっ!」
一松くんは松野先生に捕まり、ガッシリと腕の中にホールドされてしまった。
「わ、わかったから離せっ!」
「部長と副部長、いってらっしゃーい!」
「あ、あはは…いってきまーす」
おそ松くんとわたしは、顔を見合わせ苦笑しながら部屋を出た。