第39章 ※番外編 F6 十四松先生と二重奏を 第二楽章
・・・
「お願いしますっ!」
タクトを持った松野先生にみんなで挨拶をする。
これが、合奏の合図だ。
「ハーイ子猫ちゃん達!暑いからサクッと練習してみんなでアイス食べよう!!」
先生はみんなを笑顔にするのが得意だ。
本番一週間前で緊迫した雰囲気を、野球のユニフォームとアイス宣言で途端に和やかなムードに変える。
「あいつのこういう所、敵わないよねっ」
わたしの隣でトランペットを構えたまま、おそ松くんが白い歯を見せて笑った。
「うんっ」
わたしはみんなに尊敬されながらも、気取らずにわたし達と同じ目線で接してくれる、そんな先生が大好きだ。
——あいつは…十四松は気をつけろ。お前にだから言うが、相当遊んでいるぞ
あれから、一松くんのあの言葉がずっと引っかかっていた。
きっと、悪意なく無邪気に沢山の女性を抱いてきたのだろう。
だって、わたしを押し倒そうとした時、ものすごくスムーズだったもん。
大好きだけれど…ファンその一として遠くから先生を見ていよう。
きっと…それが、一番…
ツンッ
「っ!?」
不意に隣のおそ松くんに肩を小突かれた。
気がつくと、もう曲が始まっていて、もうすぐトランペットが入る所だった。
(ありがとう!!)
おそ松くんに目配せして、わたしは楽器を構える。