第39章 ※番外編 F6 十四松先生と二重奏を 第二楽章
グラウンドに着いたけれど、いつもの場所に松野先生はいなかった。
「あれ?ここで野球部の練習を見ていると思ったのに」
辺りを見渡すが金髪を見つけられない。
すると、一松くんがグラウンドの打席を指差した。
「えっ?今練習試合中でしょ?どうしたの…ってせ、せんせーーっ!?何してるんですかーー!?」
「ばっちこーい!!」
松野先生…ついにそこまで首を突っ込んでいるなんて。
どこから持ってきたのか分からないが、先生は黄色い野球のユニフォームを着てバットを握りしめている。
老若男女問わず人気者な松野先生は、どうやら野球部のみんなにも愛されているようだ。
(というか、野球部全員顔赤くなっているし…)
「この姿になっても、十四松というジャンルは健在しているようだな」
「そ、それってどういう意味?」
「そのままだ」
「ふーん?」
一松くんは無表情だが、楽しそうにポケットに手を入れて野球観戦している。
(まぁ、F6の中で暗黙のルールみたいなのがあるのかもしれないし、これ以上詮索するのは辞めよう)
三年間部活動を共にしたけれど、未だに彼らは謎に包まれている。
雲の上の存在は、やはりプライベートが厚い雲で覆われているのだった。
—カッキーーン!!—
気持ちの良いホームランを告げる音がグラウンドに響いた。
「よし、連れて行くぞ」
「う、うん!」
わたし達は、ユニフォーム姿の松野先生を強制連行した。