第38章 ※番外編 F6 十四松先生と二重奏を 第一楽章
わたしの高校は、比較的人通りの多い場所にある。
そのため、夜でもそんなに物騒では無いけれど、
「お前、一人でいるとか信じられない。何かあったらどうするんだ?」
一松くんに叱られてしまった。
「ご、ごめんねっ。でもわたし、遅くなった時は時々一人で帰るけど、いつも平気だよ?」
「…呆れるほどのんきな姫君だな…。帰り道もそうだが、おれが言ってるのはさっきの音楽室だ」
「ええええっ!?な、何が!?」
見られたのかと思い、必要以上に動揺したけれど、幸いバレてはいないようだ。
「あいつは…十四松は気をつけろ。お前にだから言うが、相当遊んでいるぞ」
「えっ?」
思いがけない一松くんの言葉に、ズキリと胸が痛んだ。
(わたしだけじゃ…ないんだ。そりゃあそうだよね。あんなにカッコいいし才能あるし…F6だし)
「どうした?」
「あ…えと、そ、そうなんだね。でも、優しいし面白いよ?」
「ああ、人間的に憎めなくてスゴくいいヤツだ。おれも…好きだし。だからこそ女癖悪いのが厄介なんだ」
「そ、それは確かに厄介だね…」
諦めたいのに、憎めないとか、いいヤツとか——そんな事を言われたら、ダメだと分かりつつもますます気になってしまう。
ますます、あの後の続きを想像して胸が高鳴ってしまう。