第38章 ※番外編 F6 十四松先生と二重奏を 第一楽章
慌てて先生から離れると、扉が開き、薄暗い廊下から人影が一つ。
「一松くん!」
「…いい曲だな。十四松の曲?」
「うん。居残りしていた副部長に吹いてもらっていたんだっ。イチはどうしたの?」
呼び方が副部長に戻っている。
そして、今あった出来事がまるで無かったかのように、先生はニコリと微笑んだ。
「忘れ物したから取りに来た」
一松くんはツカツカと歩き、組み立てられたままのドラムセットの下から本を取り出しカバンに入れた。
「主、一人じゃ危ない。一緒に帰るぞ」
「わ、分かった!では、松野先生さようならっ!」
「アディオス!イチ、お姫様のこと頼んだよ。ホームパーティは後で顔出すから」
一松くんに強引に腕を引かれながら、わたしは音楽室を後にした。
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