第38章 ※番外編 F6 十四松先生と二重奏を 第一楽章
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演奏を終え、楽器を下ろす。
クーラーの効かない音楽室で熱演したせいで、二人は汗びっしょりである。
汗ばんだ先生の白いシャツは、肌が透け妙にセクシーだ。
わたしは思わず目を逸らした。
「アッハハッ!すごく良かったよ!ありがとう!」
「楽しかったです!こちらこそありがとうございました!」
「でも、ちょっとだけイメージと違ったかな」
松野先生は、楽器を片付けているわたしの頭をそっと撫でた。
「す、すみません。下手で…」
「いや、そうじゃなくて…キミさ、最近音色変わったね?」
「え?特に奏法とか変えてませんけど?」
なんだろう?
何が気に入らなかったのかな?
初見にしてはまあまあの出来だったと思っていたので、少し落ち込んでしまう。
「いや、下手とかじゃないよ。主…ちょっぴり大人になったね?」
「っ!?」
松野先生がわたしの顎を細長い指でクイと掴んだ。
「おれはね、楽器はさ、そりゃあ上手い下手あるけれど、奏者の内面を映し出す鏡だと思っている」
「は、はい…」
緊張して身体がこわばる。
「入部したてのキミは、本当にウブで可愛くて、垢抜けない音をしていた」
「垢抜けない!?」
「ハハッ、嘘はつけない性分なんだっ」
先生はワザとわたしをむくれさせて楽しんでいるようだ。