第38章 ※番外編 F6 十四松先生と二重奏を 第一楽章
「あ、ありがとうございます」
照れながらシュークリームを受け取りかぷっと頬張った。
「美味しいです!」
「うん、いい顔してるねっ!そんな顔されると、キミのこと食べちゃいたくなるよ」
ニコッと微笑みながらすごい事を言われ、カスタードを床にこぼしそうになった。
「二人きりの時に変な冗談やめてくださいっ!」
「主は真面目だなー。ぼくが生徒じゃなくて先生でよかったね?」
先生は意味深な含み笑いをし、パソコン脇のプリンターをガチャガチャ弄り始めた。
(もう、セクハラばっかり!…嫌じゃないけれど)
先生の背中を眺めながらシュークリームを食べる。
松野先生は、普段わたしのことを「副部長」と呼ぶけれど、二人きりだと下の名前で呼んでくる。
嬉しいけれど、周囲にバレたら問題になるんだろうな。
それに、お姫様抱っこの時やさっきの言動だって……。
(お、思い出したら恥ずかしくなってきた…)
「先生、で、ではそろそろ帰りますね」
わたしが立ち上がると、頭にペチっと紙を乗せられた。
「え?」
「帰る前にさ、ぼくが作曲中のソナタ吹いてみてよっ?」
どうやら、これがやり残した事だったみたいだ。