第38章 ※番外編 F6 十四松先生と二重奏を 第一楽章
「主、いつも十四松がすまないな」
「ホント、どっちが大人か分かんないよねっ!」
「あっ!イチとトド発見!!」
「先生、はしゃぎすぎです」
一松くんとトド松くんに抱きつこうとした先生を、わたしが袖を掴んでなだめた。
一松くんは紫色の美しい髪を持つ、マイペースな五つ子の四男。
学校帰りによく猫に餌をやっている姿を見かける。
担当楽器はパーカッション。
特にドラムが好きみたいで、部活後勝手にドラムセットを組み立ててペチペチ叩いている。
「十四松にーさんはホントに自由人だから、主ちゃんがいてくれてよかったよ!」
「そ、そう…かな?」
その言葉と可愛らしい笑顔に、わたしは照れて俯いてしまった。
この奇跡のルックス、花も恥じらう美少年は五つ子の末っ子トド松くん。
校内でも日傘をさす徹底した女子力の高さは、女生徒の間でカリスマ的存在になり、ファンクラブまで出来ている。
担当楽器はこれまた乙女なフルートである。
わたしたちが音楽室へ戻ろうと階段を上がり始めると、
「キャーーーッ!!F6が三階の階段前で全員集合してるーーーぅっ!!」
不意に通りがかった女生徒が黄色い声を上げた。
すると…
「キャーーー!おそ松くーんっ!!」
「チョロ松様もいるわーーっ!!」
「キャーッ!一松きゅんと目が合ったーー!!」
ガヤガヤと女生徒達がわたし達の周りに集まってきた。