第37章 番外編 F6 カラ松と捨て犬
顔の火照りが収まり主の方を向くと、砂浜に座り込んでいつものように海を見つめていた。
夕闇が迫ってきているせいなのか、背中が少し悲しそうに見える。
「カラ松さん、ごめんなさい」
隣に座るとポツリと謝ってきた。
「は?何が?」
「不愉快な思いをさせてしまって…」
どうやら、オレを怒らせたと勘違いしているようだ。
(んな事ぐらいで、そんな寂しそうにすんじゃねーよ)
オレは我慢出来ず、主の肩を抱きよせる。
「あ…」
ビクッと肩を揺らし声を漏らす主。
「なぁ、この後時間あるか?」
「えっ?…う、うん」
「じゃあ、出かけるぞ」
立ち上がり靴を履かせ、強引に手を引いた。
「あのっ、カ、カラ松さんっ、どこに行くんですか?」
「うるせーブス!黙ってオレについて来い!」
ヘルメットを渡し、バイクの後ろに乗せる。
「手、離すんじゃねーぞ」
「…わかったっ!」
まるで犬がシッポを振るみたいに、主はオレの背中に抱きつきながら頭をすり寄せた。
夕闇の中、乾いたエンジン音が響き渡っていく。