第37章 番外編 F6 カラ松と捨て犬
(一松と会わせたら面白い事になりそうだな。アイツもマイペースなところあるし)
なんて思っていたら、主は肩を落としながら話し出した。会話はまだ続いていたらしい。
「…人と話すのが苦手なんです。よく、お前の話はわかりづらい、主語がないって同じ事言われます。だから、イライラさせちゃって、みんなと仲良くなれません」
「そうか…悪かった。怒鳴っちまって」
苦手と言うわりに、初対面のオレに対して素直に悩みを打ち明けるあたり、警戒心が無いというか…
(寂しがり屋でかまってちゃんな、捨て犬みてーなヤツ…だな)
そう思うと、顔が勝手にほころんだ。
「ったく、しょうがねーな。オレが話す練習相手になってやるよ」
「え…?」
(何言ってんだ?オレ…)
「チッ…それと、これ貸してやる」
(だから何言ってんだ!オレは!)
ライダースジャケットを脱ぎ、主の華奢な肩に羽織らせる。
「そんな薄着でこんなとこいると風邪引くだろーが!」
「重たい…」
「文句言うんじゃねー!それ気に入ってんだから、次また此処で会った時に返せよな!」
さりげなくまた会う約束を取り付ける。
主の反応が気になりチラッと顔を見ると、
「重いけど…あったかい」
どうやら気に入ったようだ。嬉しそうに包まれている。
「フン、早速練習だ。こういう時なんて言う?」
「バカにしないで。そんなの簡単です」
得意げにそう言うと、主は少し照れながら、
「カラ松さん、ありがとう」
ふわりと陽だまりのように笑った。
(なんだよ。ちゃんといい顔すんじゃねーか)
どうにも腑に落ちないが、こうしてオレの片思いは始まった。