第37章 番外編 F6 カラ松と捨て犬
「おいそこのブス。こんなところに1人で来て何してんだよ?」
白い砂浜に着くと、フツーならばこんな時間こんな場所にいないであろう、1人の女がそこにはいた。
白いワンピースに薄ピンクのカーディガンで、なぜか裸足だ。
誰もいない砂浜で、寂しげに膝を抱える女。
揃えられたサンダル。
(コイツ…もしや)
女は黙ったまま海を見ている。
「おいっ、このオレ様が話しかけてるんだぜ?何か話せ」
「…どうも」
「はぁっ!?」
(それだけかよ!なんだこの調子狂う女はっ!?)
本来ならばサラサラなのであろう肩にかかるくらいの黒髪は、潮風のせいでややボサボサになってしまっていた。
(にしてもコイツ、1人で何時間ここにいるんだ?)
謎の女は、視線を海の青からオレへとずらし、訝しげに見つめてきた。
よく見れば…まぁ、悪くない。
おそらくスッピンであろうこの女は、化粧したらきっと垢抜ける。
…って、
「じっと見てんじゃねーよ!気持ちわりーな!」
「そちらが先に見てきたんじゃないですか」
「…ああ!?なんだとっ!?」
悔しいがその通りだった。
気がつくとオレは、なぜだかこの女に興味が湧いて目をそらせなかった。
「…オレはカラ松。お前、名前は?」
クソッ。オレから名乗っちまった。