第5章 四男と雨だれ
浴室に、艶やかな水音が響く。
不器用なキスが、問いかけるようにわたしの口内を犯す。
臆病な舌は、まるで一松くんの分身だ。
わたしの唇をそうっと開かせるように舌を入れてくると、どこかぎこちなく舌を絡ませてきた。
まるで、初めて手を繋いだ時みたいだ。
不器用で、それでいて真っ直ぐな彼がたまらなく愛しい。
わたしの上唇を味わうように、ゆっくりと舌が這う。
「…ぅ…ん…」
何だかそれが色っぽくて、思わず吐息がこぼれると、段々と一松くんの呼吸が荒くなり、キスが乱暴になってきた。
貪るようなキスをされ、お互いの歯がガリッとぶつかる。
「…あっ!」
パッと唇を離す一松くん。
「い、痛かった?」
「大丈夫…」
わたしがそう言うと、少しバツが悪そうにうつむいてしまった。
「…やっぱり…おれ」
「やだ…」
「…え?」
「やめないで…」
下を向く彼の頬を両手で掴み、わたしからキスを再開する。
「主…」
一松くんは戸惑いながらも激しく受け止めてくれた。
舌を絡ませながら、ゆっくりと、一松くんの手がわたしの胸に触れたかと思うと、痛いくらいに揉みしだかれる。
その乱暴で、欲望剥き出しな愛撫がなぜか可愛くて、応えるようにわたしもキスで返す。
一松くんは、余裕がなさそうに呼吸を荒らげている。
彼の息づかいが色気を纏い耳に残る。
「ぁ…っ」
敏感な両胸の先端を摘まれ、わたしが声を漏らしたその時…
——ぽたっ
「い、一松くん!?」
一松くんが、鼻血を出した。
・・・